Gallery MORYTA

田上允克 展 - 太古の薫り - 

Masakatsu Tagami Exhibition

2001年3月10日(土) - 4月 1日(日)
田上允克 展 - 太古の薫り - 

失われた太古の薫り、土と光の狂熱的な叫びを孕んだフォルムと色彩、呼吸するがごとく、
よどみなく描かれる大地と人の交響。そこには、確かに、解き放たれた澄明な魂の跳梁がある。


 今世紀初の画廊香月での企画展は、田上允克展「太古の薫り」でスタートした。この企画展は、現代に生きるわたしたちが見失いかけている何か大切なものを、画家『田上允克』の作品を通し、また作家本人の生きざまを通して感じてもらおうという企画となった。
 

 現在56歳になる田上は、大学を出てからの長い期間、世に譲歩せず、強靱な精神力で執拗に「生きる意味」を求め続けました。「散歩と読書だけしてたんです。」と語る画家に、全く気負いは感じられない。 30歳になる直前、街の小さな美術教室を訪れた画家は、瞬時に自己のありようを「エカキ」に導いていったのです。それまでの孤独な闘いを終え、彼の全細胞に内包された魂は、すべてキャンバスに相対することに注がれました。いや、キャンバスを買う金も勿体無いので、紙や新聞紙、あるいはポスターなどなど、その厖大な量には、驚愕させられます。
 
 こうした「人生の長さに戸惑っていた...」という初期は、ちょうどゴヤを彷佛させるかのようなシュールな世界を描き続けました。毎日毎日、呼吸するように、日記のように画家の深奥に潜む多様な物語を、画面に吐きつづけていったのです。こうして、狂熱的な叫びや自らの呪縛を解き放した絵描きだけが授かる、深遠なる世界を掴み捕っていったのだと思います。
 

 この当時の様子は、あの「気まぐれ美術館」の著書でも知られる、故洲之内徹氏が「彼の才能、真に恐るべし」という表現をもって書かれています。実家である旧家の納屋に、押し込められた作品の数は「二万点位になるのかなぁ。」と画家は言います。絵を描く人なら誰でも解りますが、この数字にはびっくりです。
 

  最近作は、初期の作品と同じ作家だとは、誰もが信じられないほどの、おおらかでのびやかな線や色彩で表現された抽象画です。内発的なものの豊かさ(洲之内氏談)によって溢れるように生まれるイマジュネーションの世界が、画面に次々と生み出されてくるのです。そして、その一枚一枚が、すべて新鮮で面白いのは、過剰なまでに積み重ねてきた研鑽と修練に裏付けられているからだと思われます。
 

 オイル・アクリルミクストメディア/紙で描かれた作品が約30点展示されます。 土の匂いや自然の光に溢れた色彩に、大地のようなおおらかな線が織りなす空間。鮮麗な世界がひらかれ、静謐なる永遠を感じさせてくれます。それは、わたしたちが生活をしている現代社会とは異質の、人間が人間らしく生きていた太古のロマンを呼び覚まさせてくれるのではないでしょうか?